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Squall Leonhart
FF8のストーリィはすべて、「スコールを伝説のSeeDとすること」に終始していたように思われるが、それらはすべて周囲の思惑により形成されていった環境であり、彼自身の関与するところではなかったろうことから、彼の伝説のSeeDへの道のりは他の人物紹介の項に譲ることにして、彼が伴侶として選んだリノアとの関係について考察してみよう。
まずは彼等の年齢について考えることにする。FF8の地球人が我々と同じ身体の構造をしており、地球の公転時間もこちらの世界と同じと仮定しないと話が進まないので、これは大前提とする(尤も月がとーっても大きく見えてたから、同じとは到底思えへんねんけどな……計算なんてできないしさ;)。さて、『ULTIMANIA』の設定によればスコールは17歳。これをゲームスタート時(SeeD試験のある春)と仮定すると、8月生の彼は19年前(これを仮に4239年とし、現在-プレイ開始時を4258年とする)の11月頃、母親(レイン)の胎内に宿ったことになる(WHOの定めた正常妊娠持続日数は280日)。だがこれは不可能である。彼の父親(ラグナ)は19年前にはレインと出逢っていないのだから。
ラグナ達への最初のジャンクションで、ティンバー軍と戦うはずであったラグナは「デリングシティ」の名を出している。(デリングが二世でないと仮定すればの話ではあるが)元首でもない人間の名を首都に付けるとは思えないため、ラグナがジュリアと親しくなった時点ですでにヒンザー・デリングは大統領に就任していたことがわかる。ここで、『月刊暗黒政治経済』の記事より、デリングがティンバー攻略に乗り出したのは大統領就任後。また18年前、ワッツとゾーンの親が殺された時点でデリングは、森のフクロウのメンバによれば「大統領になったばかり」なので、スコールがラグナに初接続した時間は、如何に早くとも19年前の年末なのである。その後幾つか任務をこなしたのち、ラグナは大石柱(ルナティック・パンドラ)の調査で大怪我を負い、半年程は動けなかったのであるから、スコールがレインの胎内に宿されたのは、18年前(4240年)の11月としか考えられなくなるのである。
ならば『ULTIMANIA』記載の設定は、ゲームエンディング時(恐らく初秋、スコールの8月誕生日以降)のものとするしかない。これはまた、その時点でリノアも17歳という設定であるのだから、スコールよりリノアの方が半年程早く(3月に)生まれているということを指してもいる。ここまでを踏まえておいて頂きたい。
さて、ここでスコールの父親であるラグナと、リノアの母親であるジュリアとの、恐らく18年前のロマンスが問題になってくるのである。
端的にゲームに示された記述を挙げる。
- デリング、大統領となり、ティンバー制圧に乗り出す(早くとも19年前か恐らく18年前。『月刊暗黒政治経済』より)。ガルバディア兵ラグナ、この任務に赴く。
- ラグナ、ジュリアと良い仲になる。
- ガルバディア、ティンバーを制圧(18年前。この時点でデリングは「大統領になったばかり」。森のフクロウの歴史より)。(2、4、5、6辺りと入れ替わりの可能性は有り)
- ラグナ、セントラの任務に赴き、重体を負う。
- ラグナ、ウィンヒルでレインに半年程看病される。
- ジュリア、ラグナが行方不明となり落ち込んでいるところをカーウェイ少佐に慰められる。
- ウィンヒルに辿り着いてから1年近く経ってラグナの許にキロスが訪ねてくる。
- 「(ジュリアが)最近(カーウェイと)結婚したらしい」(ウィンヒルを訪ねてきた直後のキロスの台詞より)
- ジュリア、結婚して1年後に長女(リノア)を出産(チュートリアル人物の項より)。
次に、多分に冗長を持たせて作成された表1、2を御覧頂きたい。なお、表1の番号は表2の番号と対応しており、上記リストの番号とは対応しない。
表1
年 |
4239 |
4240 |
4241 |
月 |
11 |
12 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
ラグナ |
1 |
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4 |
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2 |
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5 |
6 |
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3 |
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ジュリア |
1 |
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3 |
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4 |
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2 |
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5 |
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レイン |
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1 |
2 |
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3 |
■ 冗長無し事項
ラグナが自分の子の存在を知っていたとしたら、
4、6は多少長くなる可能性も有り。
表2
ラグナ |
1 |
ジュリアと親しくなる |
2 |
色々と危険な任務をこなす
・セントラ大脱出 |
3 |
レインに看病される |
4 |
キロスが訪ねてくる
・「セントラ大脱出から1年近く」
・「ジュリアが最近結婚したらしい」 |
5 |
スコールを作る(死) |
6 |
エルオーネを探しに旅立つ |
ジュリア |
1 |
ラグナと親しくなる |
2 |
チュートリアルによれば結婚した頃
・「結婚して1年後に出産」 |
3 |
リノアを身籠もる |
4 |
キロスに「最近結婚したらしい」と言われる |
5 |
リノア出産 |
レイン |
1 |
ラグナを看病する |
2 |
スコールを身籠もる |
3 |
スコール出産 |
ここで、明ら様な矛盾が生じる。キロスがウィンヒルを訪れたのは、セントラ大脱走から1年近くのちのことなのだから、どう早く見ても10月以降なのである。だがその際、彼は「ジュリアが最近結婚したらしい」と言っている(ラグナ4、ジュリア4参照)。ところがチュートリアルの説明を信じれば、ジュリアの結婚は3月頃でなくてはならないはずである(ジュリア2参照)。これはおかしい。
仮にキロスが嘘を吐いたとする。つまり実際にジュリアの結婚が3月だとすれば、ラグナとの出逢いをどんなに早めて4239年年末としても、それから少なくとも幾つかはきつい任務をこなしていた(『ULTIMANIA』p268)はずのラグナが最終的にセントラで行方不明になって(4240年頭)から本当に間も無く、ジュリアはカーウェイと結婚したことになる。だからキロスはラグナを哀れに思い、それから大分後に結婚したということにしようとしたのだろうか。
実はこの説が、ラグナとキロス、ジュリア、レインの間だけを見れば、大人だけを見れば1番すっきりしている。だがこれだと、何故エルオーネが敢えてスコールにジュリアとラグナのロマンスを(自身の能力で接続させて)見せたか、がわからない。
レインとラグナを大層慕っていたエルオーネが、ラグナとレイン以外の女性とのロマンスを見たがったとしたときの、また同時に、可愛がっていたスコールに初めて父親を見せる際に、父親の母親以外の女性とのラブシーンを見せるとしたときの、不可解さは御理解頂けると思う。その不可解さを拠り所に、わたしは他の説を考えざるを得なかったのだ。
では、ラグナに最初にジャンクションしたときのジュリアとの逢瀬を、何故エルオーネがあの時点で見なければならなかったか、を最初の視点として見てゆくことにする。
エルオーネが恐らくすべてを知っていて(時間圧縮の行われる過去を知っていて)、スコールがSeeDになるシナリオを組んだのだろうことはエルオーネの項で述べたが、それはつまり、アルティミシアがかつてリノアという少女だったことも知っているということであろう。
少なくともシドがフューリーを知っていたことは確実と思われる。それは雷神がガルバディア・ガーデンにスコール達に対する魔女暗殺の命令書を持ってきたときの台詞から知れる。スコール達に魔女暗殺依頼を出したとき、シドはデリングシティに居たのである。何をしていたか。カーウェイに魔女暗殺を協力させるための説得をしていたに他なるまい。ならば、幾らガルバディア・ガーデンとガルバディア軍が近しいとは言え、事実上の軍最高指令官カーウェイに、デメリットも無視して国家反逆罪ともなる決断をさせるほどのシドの説得とは如何なるものか。
シドの切り札は、今スコール達が任務に就いている森のフクロウに属すカーウェイの一人娘、リノア以外にはあり得ないだろう。そもそも何故普段なら受けないような低料金の任務を、しかも将来伝説のSeeDになるとわかっているスコールに就かせたのかと考えれば、シドはリノアのことを昔から知っていたとしか思えなくなるのである。しかも魔女暗殺に協力させるとなれば、理由もまた魔女にあるだろう。つまりリノアが将来魔女になるのを防ぐためにも今のうちに魔女を暗殺しておかないと、というものである。それ以外には、カーウェイが人生を捨ててでも魔女暗殺を行おうとした理由は考えられない。
シドはリノアの将来(過去)を知っていたのである。そしてリノアの未来を知っていた人物、シドにリノアの存在を教えた人物はエルオーネないしイデアしか居ない。また、アルティミシアの意識を知ることがイコールアルティミシアに乗っ取られることであったイデアが、アルティミシア自身も知り得なかったリノアという少女について語ったとは思えないことから、リノアの未来を知っていたのがエルオーネしか居ないことは確実と思われる。
ならば、エルオーネがリノアの母とラグナの逢瀬を、スコールがリノアに(今度こそ偶然ではなく)会う直前に、スコールを介して見たということは何を意味するのであろうか。このタイミング、やはり自分が見たかったためというよりは、スコールに敢えて見せた、と考えたほうが自然である。では何故、エルオーネはスコールにこの事実を知らしめなければならなかったのか。
力のコントロールができなかったわけではない。エルオーネがスコールにあの二人を見せたのは敢えてあの時期にあの場面を、なのである。リノアの母親がスコールの父親と昔良い仲だったとして、それを彼の母親を見せるより前に、つまり自分そっくりの女性とラグナが恋仲になる場面を見せて自分がレインとラグナの子供なのだと気付かせる前に、ラグナとジュリアの恋を敢えてスコールに見せた意味は何か。そしてまた、ジュリアとラグナの場面を見せた直後に、プレイヤにあの夢が18年前の出来事であったと知らしめる(『月刊暗黒政治経済』及び森のフクロウの歴史)シナリオにしたシナリオライタの意図は何か。
アルティミシアがリノアだと知るということはつまり、リノアとスコールが恋仲にあったことを知るということでもある。スコールとリノア、二人の母親が共にラグナという男を愛したことは、(エルオーネが過去を見せる対象であった)スコールにとって如何なる意味があるのか。如何なる意味があるとエルオーネは思ったのか。如何なる意味をプレイヤに持たせたかったのか。納得できる答えなど、わたしにはたったひとつしか思い付かなかった。
スコールとリノアが異母姉弟であるということ。
スコールとリノアの未来は、エルオーネにとっては過去の変えようのない事実であった。だが二人が姉弟なのだと知ったエルオーネは? エルオーネは自身に二人が愛し合うことを止める権利があるとは考えまい、だがスコール自身にそれを止めさせる手立てがもしあったとしたら。
リノアとスコールが出逢う運命は違えることは、未来という過去をトレースするためにもできない。だが二人がもし、そこまで深い仲になる前に自分達で気付けば、二人の傷も浅くて済むのではなかろうか、とは考えられないだろうか。それが故の、あの時期のあの半端な示唆。気付けなかったのならばそれまで、過去のとおりに未来は紡がれるまでのこと、仕方がないとエルオーネは諦めて、でもせめてもの祈りを込めて。
こうなると、ラグナ2のセントラ遺跡調査は(リノアの誕生後から逆算して)5月ないし6月頃。ラグナ6のキロス訪問も4242年年明けといった辺りになるだろうか。どちらにしろキロスは「ジュリアが最近結婚した」という嘘を吐いていることになるが(またゲームのチュートリアルも嘘ということになるが…)、キロスにしては妙に歯切れの悪かった前後の会話からしても、嘘自体に不自然はない。この嘘の理由が変わってくるだけの話である。この場合の嘘の理由。キロスがジュリアのお腹にラグナの子が居ることを承知で、だからこそカーウェイに結婚を申し込んだということを知っていたからであろう。生死もわからなかったラグナ。万が一生きているラグナを探し出せたならば、キロスはジュリアのことをラグナに話すつもりだったのだろう。だがラグナには既に別の女性が居た。ラグナにもジュリアにもレインにも、キロスは真実を話せはしなかったろう。
この説を、エルオーネが何らかの意図を以てスコールにジュリアとラグナの過去を見せたということは、別の観点からも窺い知れる。接続させる相手である。
このときの、エルオーネとレインが揃っていたときの接続者には、細心の注意が払われている。スコールにそっくりのレインと、孤児院での記憶に近い姿の幼いエルオーネを見ても、それに疑問を抱かぬ者。あのときキロスに接続されていたのは、恐らくスコール(達)の運命をほぼ知っていたアーヴァインであった。もう1人のウォードがこの現場に居なかったことは、この現場に居たエルオーネがよく知っている。エルオーネがこの時点でスコール以外ではアーヴァインにしか正体を明かすような真似ができなかった理由は、恐らくまだ伝説のSeeDの仲間の有無をアーヴァインが査定中だったからだろうと思われるが、アーヴァインをキロスの接続者として選ぶと都合の良い理由がもう1つあった。
アーヴァインは、このときに話題になるラグナのかつての恋人、ジュリアを、接続によっては知らないのである。つまり、ここではジュリアは、レインが居たために「ラグナの憧れの女性」としてしか話題に上らず、この現場しか知らないアーヴァインには、カーウェイ大佐とジュリアの子供であるリノアが、この時点で既に(スコール似のレインと良い仲であることから)スコールの父だろうと推測されるラグナの子供かもしれないとは、よもや考えもしないだろうからである。また逆に、ラグナとジュリアのロマンスを知るゼルとセルフィはレインの顔を見ない、つまりスコールがラグナの子供であることを知れないことになっている。すなわち、そのうちスコールとリノアの恋を知ることになるだろう仲間達は誰も、スコールとリノアの血が繋がっているかもしれないなどいう疑いは抱けぬように、選ばれてジャンクションさせられている。
逆に言えば、リノアの生年月日を知りさえすれば、『月刊暗黒政治経済』を読める立場にあったスコール(というよりプレイヤ。スコールは単に歴史を知ってれば、この雑誌の存在なくしてこの仮説が立てられるだろう)には、この3度目の接続(ウィンヒルでラグナとしてレインを見たとき)で、リノアが自分の姉かもしれないと疑うことが可能なのである。
あまりに巧妙に他の仲間に隠されていたが故に、エルオーネの裏の意図を探らざるを得なかったプレイヤと同様、(シュミ族のイベント等で尋常ならざる推察力を示されている)スコールもまた、この結論に至ったのではなかろうか。
スコールが実際、これを疑ったかどうかの示唆はゲーム中になかったと思う。だが仮にこれが真実だったとして、真実であるとスコールが信じたとして、スコールにはどうでも良いことだったのではないだろうか。
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特 別 な る 運 命 が 為 最 初 に 選 び 抜 か れ し 者
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