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Laguna Loire


 何なんだこの奇妙なイキモノは。それが彼に対する初印象。エスタ大統領官邸にウィンヒルの絵が飾ってあるのに気が付いて、泣くかと思った。それが2回目の感想。
 ラグナ。発売前に絵だけで色々と想像していたラグナより、ずっと笑顔の素敵な人だった。誰より優しく笑う人だった。あんな笑顔を、わたしは知らない。1回目のプレイは、ただただ彼の笑顔に心温まり、救われた。2回目のプレイは、あんな風に笑えてしまう彼がただただ哀しかった。ウィンヒルで変わることのできた彼に喜べたのも束の間、彼の幸せはまたもや彼の性質のために儚く散ってしまった。そしてそれ自体も哀しいが、何より、そんなことがあってさえも、つまり44歳のラグナでさえも、昔と変わらぬ笑顔を浮かべられてしまっていることが、わたしには哀しかった。
 空洞。ラグナを思うとき、わたしはぽっかりと大きく開いた虚無を思い浮かべる。それこそがラグナのラグナたる本質だと思っている。ラグナの優しさというのはこの場合、許容量の大きさという意味である。何もかもを受け入れ、何にも捕らわれることなく、世界のすべてを慈しみ、すべての物事を楽しめる。だからこそ、受け入れられると思えばこそ、皆彼に惹かれるし、彼を頼る。だが彼が、自分のされているように誰かに自分を預けられたかと言えば、自分で何もかも抱え込める強さがありすぎて、そもそも預けられる自分というものが存在しないかのように、彼はひとりで立ててしまう。彼の広さの中に落ち込んでしまって、彼の痛みも苦しみも、私欲さえも見えない。我欲が過ぎて何もかもを望める人だから、何も望まないかのように見えた人で、だからこそ他人の、世界のために生きられる人でいられる人で、そしてそういう人で在り続けた。
 わたしのラグナ像は、こんな感じだ。彼は人々に望まれ続けた人だったからこそ、あまりにも孤独だ。そして哀しいことに、彼は自分の孤独にも気付けぬほど広く、強い。そこが彼の本質的な孤独だ。
 だからこそ、スコールをラグナにあげたいと思ったのだ。ラグナが唯一、自分のためだけに生きられた場所、ウィンヒル。自分のためだけに欲することのできた家族、レインとエルオーネ。キロスの言ったとおり、確かに彼はあそこで変わったのだ。彼はあそこでだけ、通常の意味で我儘かつ卑小な人間になれていた。
 そこで何故エルオーネではなくスコールのほうが適していると思ったのかと言えば、レインに似ているからでも何でもない、スコールがSeeDにしかなれぬ生き物だからである。言ってしまえば、ラグナと同種の人間だからである。自分で選びたくなくとも他に選びようがなく、同時に選びたかった道でしかなかった、たった1本の道。ラグナにとって、スコールにとって、英雄の道はそういう道でしかあり得なかった。
 だからこそ、ラグナはスコールの、孤独を知って初めて自分の孤独にも気付けるんじゃないかと思ったのである。逆に言えば、スコールが居なければ、ラグナは一生自分の抱える深い深い絶望と孤独を、知ることはできないんじゃないのかなーと。何しろ、スコールは、ラグナが捨てたせいでそういう道を歩まざるを得なかった(とラグナが思い込むには充分な)彼の息子という立場にあるのだから、さすがに、如何な自分のことには鈍いラグナでも、スコールの抱える孤独の正体に気付くだろう。スコールが自分の歩んできた道を大事にすればするほど、それはスコールの孤独を浮き立たせ、ラグナの罪悪感を刺激する。如何に苦しく危険な道でも、それを自分の望んで歩いてきた道だと思えてしまえるその強さから生じる孤独を、スコールの中に見て、ラグナはやっと、自分の望むままに歩んできたと思っていた人生が、スコールと同様に淋しい、レインもエルオーネもスコールも居ない道だったのだと、気付けたんじゃないかと思うのだ。
 さてさて。話移りましょう。ラグナ様の強さについて検証。だってだって、ラグナ様達の戦闘能力って明らかにされてないんだよ! いや、『ULTIMANIA』にゃ確かに書いてあっけどさ、ってーか仮にレベル一緒やったらスコールより高いやん! いやまぁとにかく、彼等がワシ等プレイヤの目に触れるときはいつも妖精さんジャンクション時で妖精さんの能力値が受け継がれた状態なので、彼等の真の力量は推して知るべしーなのだ。ということで、でわラグナ様たちの戦闘能力を推理してみよう。
 ラグナ様達の戦闘能力に関係するかな〜ってことでわかっていることといえば、
  1. 3人で行動を行っている。
  2. 戦闘のみならず偵察なども行っている。
  3. 大石柱(ルナティック・パンドラ)に派遣されている。
  4. エスタ兵に包囲された戦闘を「運動とは言えない」と言っている。
  5. 妖精さん達が来たときに「戦闘が楽」と言っている。
  6. エルオーネをエスタ兵に奪われている。
  7. エスタの研究所で戦闘になったとき「またやっちまった」と呟いている。
  8. 実際にスコール達に会ったときに「訳わからない力で凄い戦い方ができた」と言っている。
の8点ぐらい? である。
 2に関しては、2通りの解釈ができる。どうしようもない落ち零れで、クズはクズで纏めてしまえという魂胆から、偵察など重要度の低いほぼ非戦闘員としての役目を担わせている、という解釈。しかしここで疑問なのが1より、(ガルバディア軍の規律がどうなっているのかわからないが)果して軍組織がこのような少数部隊での行動を一般兵に許すものだろうか、ということである(ゲームとしての必要上だなんて言っちゃ駄目ン♪)。おまけに3からも、見付かれば重要度の高い大石注の調査に、しかも未知の国であり古代超文明も数多く眠っている、かつエスタ配下にあるセントラに、たった3人で派遣される下っ端兵士が居るだろうか?(ジュリアと良い仲になったラグナに嫉妬したガルバディア上官の陰謀という話もあるが、当時でも大国だったガルバディアの軍がそんな私怨で動かせるかなぁ…) という疑問が浮かぶ。4、7からも、彼等がそこまで戦闘慣れしていなかったとは思えない、というか考えなしに相手の能力も知らず戦闘に突入してしまうケースが多かったと推測される。それでも彼等が戦場で生き残ってきているのは事実である。従って、ずば抜けて強いからこそ少数精鋭での行動を許されていたという解釈もできる。これはまぁ、ガルバディアの軍内部を知らんから何とも言えん問題ではあるが……。
 5に関しては、そのまま言葉を受け止めれば「強い妖精さん達に戦ってもらえてラッキー♪」ということになるが、それはラグナ達自身の強さないし弱さを何も示してはいない。或る程度以上の戦闘能力がある人間が自分達の身体を乗っ取って戦ってくださる分には、自分達が楽をできるだけで全く問題無く任務を遂行できるからだ。自分達より強い人が戦ってくれるのなら本当に楽だし、自分達より弱い能力であっても充分に戦闘に堪え得る力がスコール達にはあったのだから、「強くなれてラッキー」という解釈と「戦わなくて済んで楽〜」という2通りの解釈が可能である。しかし8より、ラグナが妖精さんに期待していた能力は、どちらかと言えば魔法やG.F.の力だったように思えるのである。スコール達がどれだけ強くたって、剣なり拳なりを用いた戦い方であったら「不思議な力」ではないと思うのね。だとしたらこのラグナの言っている「凄い戦い方」とは、魔法なり食べるコマンド(大笑)なりのことだと思われる。
 5に関しては、年表の補足でも述べているが、わたしはエルオーネが攫われた現場にラグナが居たことそのものを疑っている。ラグナの戦闘能力など知らない(ぶちゅぶちゅとブンブンぢゃわからんよな…)エルは、スコール達SeeDの戦闘能力を以って、自分の誘拐の歴史そのものを変えようと考えるのが普通ではないかと思われるが、実際にはエルはスコール達にその現場を見せてもいない。ここから、ラグナ(及びキロス)はそのとき、救いになどとても来られないような遠い場所に居たのではないかと推察されるのだ(エルは彼が何処に行ったのかも知っていたことになる)。ラグナは当時のことを「自分が居ながら守れなかった」と後悔していたが、「居ながら」という言葉は実際にその現場に居たという意味ではなく「出会っていたのに」という意味にも取れる。以前にもエスタ兵と戦っていたのをわたしたち(プレイヤ)は見ているが、「運動にもならない」程度のエスタ兵に、大人数であったとしても負けることがあるだろうか?
 ということでワシなりのドリィ夢入り結論。ラグナ達の戦闘能力は、平均のガルバディア兵を遥かに凌いでいたとわたしは考える。そしてエスタに派遣される際の大統領官邸前に集合という話から、またキロスのガルバディア出身とは思えない風貌から、普段は兵士として戦闘に参加してはいるが、ホントは大統領子飼いの諜報用外人部隊だったのではないか〜……なんて夢見ちゃったり♪(死) まぁデリングさんのイメージとはあんま結び付かないんだけどね。しかしでリングがエスタ人ぽい設定には何の意味があるのだ?
 ところで。ワシがFF7と8をくっつけたくなった理由なのだが、レインのお母さんって多分(同世界でなかったとしても)ティファじゃないかと思うのよねー…(遠い目)。レインとピアスがおんなじなんだわ。で、スコールの瞳ってクラウドと同じブルーアイでしょ。スコールの苗字はレオンハート。誰が苗字を付けたかというか教えたかと言えばエルだろうが――レイン・レオンハートでもまぁいいんだが――もし小さなエルが憶え間違いをしていて(或いは本名を教えられない理由があって)、実際にはレインの名はレイン・ロックハート(Lockhart)だとしたら? そう疑わせるには充分に似た名である。初めてティファの苗字見たとき、なんて変な名前だろうと思ったことを今でも鮮明に憶い出せるが、もし彼女がレインの母なのだとしたら、この違和感は氷解してしまうのだ。すなわち、「ラグナ(ロック)の失われた心(ハート)」。レイン・ロックハート。ラグナの失われた最愛の妻。