「犯人を推理で追い詰めてみすみす自殺させちまう探偵は……殺人者と変わんねーよ」
あンときのおまえの言葉が、今もオレを支えとる。
「服部はオレのこと優しいっつったぜ」
「ああ、それは言うかもなぁ」
「言うと思った?」
「西の探偵君は確か、大阪府警本部長の息子さんだったよな」
「そうだけど」
「小さい頃から礼儀と作法を叩き込まれて、正義感も強いししっかり自分っつーものの土台を理解してる。根っこが張ってる人間だから、そういうことも言えるだろうよ」
「? イマイチ」
「つまりな、優しいのはその服部さんの方だってこった。自分が優しい人間じゃない人間は、そもそも他人のことも優しいだなんて思いたがんねーから」
「服部がオレを優しい人間だと思いたがってる?」
「実際におまえが優しい優しくないは関係無くな」
「それってオレが冷たいって――」
「言ってない」
「前には言ったな。じゃあ逆に、おまえはオレを冷たいって思いたがってるってことか?」
「オレは優しい人間だからなー♪」
「……は?」
「ボウズ。アリスのセロリ嫌いの屁理屈って知ってっか?」
「ルイス・キャロル? 私セロリが嫌いで良かったわ、だって好きだったらセロリを沢山食べなきゃいけないじゃないの、ああ嫌いで良かった。……ってヤツ?」
「……今度はアリス服にしよう、うん」
「着ねーよ。で、それとさっきの話の間に何の関連性が?」
「いや、何だろな? あったようななかったような。おまえのアリス服想像したら忘れちまった♪」
「…………」
「まぁ服部君も若いからねー」
「服部のアリス服姿」
「……想像しちゃったじゃないのッ」
「ザマーみ」
「真っ直ぐに荒削りだから、調教したくなるタイプだよなー、西の探偵君って」
「……へっ?」
「おまえがしたようにさ」