6月21日のお母様

Novel

「もしもし黒羽で」

「黒羽くーん? 誕生日パーティーやるから今からブルーパロットに来てねー!」

「は? 今すぐ?」

「そう今すぐ」

「青子君、人の都合というものを」

「暇でしょ?」

「……暇だけどなッ」

「だっておばさまに頼んで用事入れといてもらったんだもーん」

「へ?」

「もう終わったでしょ。当然おばさまも連れてきてねー、じゃっ!」

 ハメられた。もはやツーツーという音を垂れ流すばかりの受話器を置いた快斗が、ぐるりと後ろを振り向くと、母親が肩を揺らして笑いをこらえている。ああ怒れない。

「楽しい?」

「めっちゃくちゃ! 楽しい」

 ああそうですか。がっくりと肩を落とす。自分と趣味の似ている――人をからかうのが趣味とは全く以てイイ性格である――母親の行動パタンを読み切れなかった自分が悪い、というより今日が誕生日だということも忘れていた自分が悪い、ああそうさ今日が何の日かわかっていれば多少は警戒もしただろうさ! つまりは己の注意力散漫である。

「まだ言ってなかったわね。生まれてきてくれて有難う」

 ほら、本当に怒れない。

「……うん。産んでくれて有難う」

「もーう、年々誕生日なんか気にしなくなってくんだから、男の子ってば。忘れてたでしょ?」

「いやー……そ、そんなことは」

「まぁいいのよ。あんたが忘れても、私は憶えてるから」

 盗一さんの分まで。聞こえないそんなこえまで聞こえてきて、だから快斗はこの日が苦手で忘れていたいのだ。だってこんなにも泣きたい。きっと泣いてしまってもいいのだろうけど。

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