ブルーパロットは、盗一の付き人だった
今回はしかし、客足の問題ではなく、店に居るのは快斗達のみのようだ。貸し切りである。未成年が店を借り切って何をするかと言えば、やはり、
「……あーおーこー……」
「あー、くろばくーん、いらっひゃーい!」
「ようこそ快斗ぉン、あいらびゅーん!」
「くろばくんだぁ、おらんりょーりおめれとー!」
「おめおめ! やっと同い年だなー!」
完全にできあがっていた。見事な酔っ払いどもである。
「主役の登場を待つだろフツー!」
「突っ込むところはそこなんかいッ」
唯一まともにシラフだったらしいヨイコな未成年の白馬君、更に快斗に突っ込む。立派な関西人である。
「俺は一応止めたねんけどな……」
「おーおーご立派ご立派。でもコイツら止めるなんて無理無駄人生の消費」
「いーじゃない、楽しそうで」
楽しそうなのはアナタですお母様。既にグラスを手にしている。
「棚のお酒、どれでも呑んでいいらしいわよー、寺井さんも豪勢ねー」
「あ、おばはん、費用は一応俺持ち――」
「さーっ、シャンパンはどこかしらーっ」
女性の耳にはオバサンという言葉は届かない。心の中でこっそり合掌をしておくついでに快斗はパトロンに感謝もしておいた。思うだけならタダだ。
「あ、青子ちゃーん!」
「あーっ、おばさまだー!」
かくて酔っ払いと酔っ払い予備軍は、男性陣を差し置いてひっしと抱き合ったのである。
「おばさまおばさまいらっしゃーい! ゆっくり楽しんでいってねっ」
「もう楽しんでるわー、お招きありがとー!」
これは果して何の何による何のための会だったっけ? 快斗が天井を仰いでいたら、不意打ちで手にふれるものがあった。
「何?」
「プレゼント」
酔っ払いの笑顔には邪気がない。いつもの可愛らしい険もない。小さなプレゼントの箱よりも、ふれた青子のぬくもりのほうが嬉しかったなんてことは、当然酔っ払いに言うつもりはなかった。
「サンキュ。開けていい?」
「駄目。あとで新一君と一緒に、開けて?」
首を傾げる。
「うーん、多分どっちかってゆーと、黒羽君より新一君のほーが喜びそうなシロモノ?」
酒が入る上に時間が時間だったので、新一は呼べなかったことを気遣っているのだろう。
「オッケ」
「じゃ。みんな、いくよー!」
「へ?」
青子の掛け声に、各々楽しんでいたはずの友人達がこちらを向く。
「では黒羽快斗君の十七歳の誕生日を祝してーッ、スリー、ツー、ワーン……!」