何とかならないものかね、進藤君。
その頭だよ、その頭。ヒヨコやプリンじゃあるまいし、そんなツートンで恥ずかしいと思わないのかね。頭だけじゃない、服装も。君は仮にもタイトルホルダーなのだよ、自覚はあるのかね。
「あはははは」
あはははは、じゃないだろう!
「はい、そうですね。アハハじゃないですね、スイマセン」
全く。少しは塔矢君を見習ったらどうだね、友人なのだろう? 彼に対して申し訳ないとは思わないのかね。
「え、塔矢? なんで?」
何故って、それはそうだろう。一緒に居てそのような恰好で、彼に恥ずかしい思いをさせるかもなどいうことは考えたこともないのかね。
「塔矢はそんなこと気にしないでしょ」
何をふざけたことを。塔矢君は君と違って誠実で真面目で繊細なのだぞ。
「そんで大雑把で碁以外には大抵無関心」
歯牙にも掛けられていない自覚があるのかね。
「逆ですよ。アイツは碁を打ってるオレに物凄ェ執着してる。そんで棋士は碁がすべてだと知っている。だからオレが弱かったらまだ外見に眉を顰めたかもしんないですけど、オレのことは外見なんかで評価しない、だってアイツもオレも棋士だから。強さがあればそれで良い、アイツはそう思ってるからオレの外見なんかどうでも良い」
……仮に塔矢君がそうだったとしても、碁界の権威というものが、
「そんなものにしがみついてる時間あったら打ってますよ、オレ達は。だからタイトルホルダーにもなってるんじゃないですか? わかってます? あなたがオレを貶めようとすればするほど、塔矢や棋士の在り方そのものを軽んじる結果になってること」
莫迦な、形があって初めてそこに収まるものが生まれるものだ。
「ものがあって、形がそれに相応しい形になるんですよ。中身のない器に何の意味がありますか。なんでしたら返上しましょうか、本因坊の座。またすぐにオレのものになりますよ」
して堪るか、この若造が! それくらいだったら俺が取ってやる!
「あはは、そのほうが碁打ちらしくて良い感じですよ、うん」