Little Red Riding Hood

I

 あるところに、赤ずきんちゃんという可愛いかわいい男の子

「女の子じゃなくてか?」

 ……いきなりツッコミ入れないように猟師さん。

「お、口挟んで悪ィ悪ィ」

 ……気を取り直して。

 あるところに、赤ずきんちゃんというかわいい男の子がいました。名前をスコールとい

「ちょーっと待ったぁあ! なんでスコールがそんな生贄になる役を……ッ!」

「誰がイケニエだ」

 どがっ!

 おやおや、乱暴な赤ずきんちゃんですねぇ。

「……というか俺の名前は赤ずきんなんだろ、どうして名前がふたつもあるんだよ……」

 いやまぁ、小説だから妄想膨らますためにはやっぱり名前が重要なわけでして。

「……は?」

 話が進まないのでとっとと行きます。

 名前をスコールといいまして、ウィンヒル村では評判の美人さんでした。雪のように白い肌、黒炭のような茶色い髪、

「矛盾してんぞコラ」

血のように赤いくちびる、牝鹿のようなすらりとした脚、

「無視すんな!」

本当にそれはそれは美しい理想の少女……もとい少年だったのです。

「話が混じってるだろ色々と……」

 そこ、うるさい! ケダモノ獣のくせにしゃべらない!

「酷ェ、動物虐待だ! 人種差別だ、訴えてやっぞ!」

 ……ツッコミどころ、そこで君が良いのでしたら何も言いませんが。

II

 さて、スコール君のおばあさんが病気になったので、スコール君はお見舞いのためにおばあさんの家へ向かって森に入って

「ちょっと! お母さんとの暖かな語らいがある場面でしょ、ここは! せっかくのおおきくなったスコールとの会話を楽しみにしてた私の立場はーッ?」

 ……とりあえず今回はホモ話なので割愛させてもらいます。あ、だけど次の台詞だけは言ってもらわないと話が進まないのでお願いしますね、お母様。

「んもう。いーい? スコール。森の中は危険なんだから、寄り道なんかしちゃ駄目よ?」

 しなきゃ話が進まないだろ、と思いながらもスコール君、素直に「はい」と答えました。

「ホントね? 絶対よ? あんたはすっごくすっごくすっごくすっごく! 可愛いんだから、ちょっとでも隙なんか見せたら襲われちゃうわよ! 気を付けるのよ、特にサイファーとかラグナとかラグナとかラグナとか!

「……あんたの夫だろ……」

 ……続けます。

 赤ずきんちゃん、森に入っていきました。手にはチェックの布と籐でできたふぁんし〜なバスケット。食いしん坊のおばあさんのために、食べ物がいっぱい入っているのでしょう。

 しかし赤ずきんちゃんはおかあさんの影響か、たいそう花が好きでした。食べ物ばかりでは可哀相と、おばあちゃんのためにお花も摘んでいってあげることに決めたのです。もうすっかりおかあさんの忠告は忘れたようです。

「いや……(忘れたら何されるかわかんないから)忘れてはいないが」

 じゃあ、なんで?

「…………。あんなこと言っててもレイン、ヤオラーだから期待してるんだよ……」

 ……………………は?

 …………。行きましょう。

 溜息を吐きながらスコール君、黙々と花を摘んでいます。花摘みだからと言ってけっして野○ソをしているわけではありません。

「きったねー話すんじゃねぇ!」

 オオカミ君登場。さすがは風紀委員、美化委員ではないですが公序良俗に反することは許せないようです。まんまとおびき出されてくれましたので、スコール君を襲ってくれることでしょう。

「おまえ……俺のことケダモノかなんかと……」

 じゃあ襲わないんですか?

「今襲って話の筋を壊してもいいのか? ああ?」

 嘘ですごめんなさい。

 ということで、

「どういうことだよ、ったく」

赤ずきんちゃんが寄り道をしているのを知ったオオカミは、この隙におばあさんを食べてしまって待ち伏せして赤ずきんちゃんとふたり、平らげてしまおうと考えたのです。

III

「おーいばあさん、そういうことだから俺に食べられてくれ」

 どんどんどん。

 近所迷惑はなはだしい大きな音でドアを叩くオオカミ君サイファーは、それでも無断で入らないあたり、とても礼儀正しい子でした。

 しかしおばあさん、なかなか出てきません。太陽が中天にさしかかる今もって、おばあさんは寝ていたのです。たいそう寝起きの悪いおばあさんを、サイファーはよく知っていました。

「ったく、まーた寝てやがんのか。おーいリノア、勝手に入るぞ!」

 はたしてベッドにはおばあさんがくーか、くーか。気持ーちよさそうに寝ていました。病気じゃなかったんでしょうかこの人は。

 この状態のおばあさんを起こすというのは、サイファーにとっても恐怖でした。

「おい。……おーい。起きろよ。そんで食べられてくれよ……」

 声が弱気です。かといって寝ている女性を無断で食べるというのは、オオカミ君のモラルに反していました。紳士です。

 仕方なく、服をはいでおばあさんをクローゼットに押し込め、その服を着込んで

「……ぜってぇ入らねえだろってツッコミはナシか?」

 なしです。

 その服を着込んで、サイファーはベッドに潜り込みました。さあ、あとは赤ずきんちゃんの到着を待つのみです。

IV

 一方、花を摘み終わった赤ずきんちゃんは、たいそうご機嫌でおばあさんちのドアをノックしました。すると中から聞こえてきた声。

「入れよ」

 スコールは首を傾げました。おばあちゃんの声はこんなに低かったか?

 いぶかしみながらも、「入るぞ」と横柄にドアを開け、ベッドで寝ているおばあさんに近付きました。

「おう。よく来たな、スコール!」

 こちらも横柄な態度です。

「……元気そうだな」

「おまえが来てくれたからな」

 さらっと口説いてるんじゃありません、そこ。

「今日はどうしたんだ? 風邪のせいで声が低いのか?」

「ん? そういや病気って設定だっけな」

「…………。どうしてそんなに胸板が厚くなってるんだ?」

「そりゃーおまえを抱き込むためだろ」

「……どうしてそんなに腕がたくましくなってるんだ?」

「おまえを抑え込むために決まってんだろが」

「……どうしてそんなにナニがデカくなってるんだ?」

「ンなのおまえに欲情してっからに決ま……ッ」

 どかばきずがっ!

「いいかげんにしろ!」

 エンドオブハート発動。

 ふぁんし〜バスケットでの攻撃にもかかわらず、あわれ、おばあさんの家は半壊状態です。さすがは伝説の赤ずきんちゃんスコール。

 肩をいからせて荒く息をつく赤ずきんちゃんのうしろから、人影が現れました。出番のなくなった猟師さんです。

 なさけない声を出して、銃をかついだラグナは近付いてきました。

「スコール……おまえ、おばあさんの家を……」

「……遅い」

 赤ずきんちゃんの目がすわっていました。猟師さんはあわててぶんぶんと手を振りましたが、手には銃が握られたままです。

「お、遅くねーよっ! だってホントの出番はおまえがオオカミに食べられたあとの話だろー?」

 赤ずきんちゃん、ますますご機嫌ナナメに猟師さんをにらみつけます。

「ふぅん? なら俺がサイファーに食われてもよかったんだな? うん?」

「そ、そんなはずねーだ」

 ずががががん!

「ろわーッ?!」

「なに撃ってるんだ!」

 うっかり猟師さん、恐怖のあまり手を掛けたままだった引き金をひいてしまったようです。散弾銃は、まだかろうじて壊されていなかったクローゼットをみごとにバラバラにしました。そこにいたのは。

「リ……リノア……?」

「んー……?」

 まだねぼけた表情で、それでもさすがに起きたらしい、全裸のおばあさんでした。オオカミ君、どうやらぱんつまではいていたようです。

「あ、スコールとラグナさん。おハロー」

 あっけらかんとおばあさんはいつものように赤ずきんちゃんに抱きつきました。……ハダカで。

 ぷしゅー!

「きゃー! ……す、スコール……?」

 赤ずきんちゃん、鼻から出血多量で失神……。

V

「悪かったなぁリノアちゃん、なんかいろいろと」

 うしろ頭をかきながら、猟師は気絶した赤ずきんちゃんを背負っておばあさんに謝りました。ラグナさんのカードで買ったブランド服をしっかり着込んだおばあさんはにっこり笑って一言。

「いいえ、気にしないでください。おわびはほんの高層マンションでいいですからー」

「は、はいー……あははは……」

 これからかかる出費を猟師さんが頭の中で考えながら家路についていると、やがて赤ずきんちゃんも目を覚ましたようです。

「ん……?」

「お。気が付いたか? スコール。だいじょうぶか?」

 背負われているぬくもりと振動を、たいそう気持ちよく感じて赤ずきんちゃんはほほえみました。

「平気だ」

「……遅れてごめんな?」

「もう、いい」

「……おまえが無事でよかった、ホント」

「……バーカ……」

「こらスコール、苦しいって」

「じゃあもっとぎゅうぎゅうしてやる」

 ……ええと。なにナレーションほっといてラブラブしてるんでしょうかこの人達は。

「あんたのほうが邪魔者なんだ」

 ぐさり。

 で、では消えましょう……時間圧縮の彼方に……。

 ラグナはスコールをさも大切なものを扱うかのように、ゆっくりと花の咲き乱れる地に下ろし、額に軽く口吻けた。そのまま口唇はこめかみ、鼻の頭、頬、そしてくちびるへと

「急に文体変えるな、恥ずかしいだろ!」

 ……けっ。

 ナレーションがやさぐれている間にも、ふたりのラブラブファイアー! は燃え上がりつづけています。かるく音を立ててキスを贈りながら、猟師さんは赤ずきんちゃんのかぶっていたフードをはずしました。

「そういえばなぁ、知ってっか? 赤ずきんちゃんの話も、魔女に関係あるらしいぜ?」

「……は?」

「森に分け入って薬草集めて呪術を行う、そんな魔女なんか火あぶりにされて死んじまえってことで赤い衣なんだってさ」

「ああ……なるほど。……だから?」

 得も言われぬ微笑で、赤ずきんちゃんは自分の赤い服に手をかけている男のおおきな手に手をかさねました。猟師さんも笑っています。

「だからおまえがそんなことになんねぇよう、脱がせて……いい?」

「もう脱がせてるくせに……」

 笑い声の混じった言葉のその先は、かさねられた口唇に吸い取らました。

 めでたし、めでたし。

VI

「ぜんぜんめでたくねぇ!」

「サイファー、なに騒いでるのよ。ほら、マンションが建つまでとりあえずは雨風しのぐ家がなくちゃ困るんだから、さっさと作ったつくった!」

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