魔法の原理

偉大なるバスカリューンの記

まだ昼と夜が混じりあっていたころ。


『ハイン』という存在があった。

『ハイン』は大地が産み出した、たくさんのケモノとの戦いに明け暮れていた。

『ハイン』は魔法を持っていたので、その力に頼って長い戦いを勝ち抜いた。

こうして『ハイン』はこの大地の支配者となった。


『ハイン』は自分のイスに座ったまま、ずっと遠くまで見通したいと思った。

ところが『ハイン』のイスの場所からでは山が邪魔で東の海が見えなかった。

山を壊してしまおうとしたが、長い戦いで疲れていたので『ハイン』は山を切りくずす道具を作って、それに仕事をさせようと考えた。

道具は勝手に動いて、必要なら自分たちの数を増やすことができるように作られた。

『ハイン』は道具を人間と名づけた。

これが男と女からなる我々人間のはじまりとなった。


人間は数を増やしながら山を切りくずしていった。

全部の作業が終わったあと、人間はつぎに何をしたらいいのか『ハイン』に聞きにいった。

しかし『ハイン』は疲れてぐっすり眠っていた。

仕方がないので人間は勝手に大地を作り変えていった。


『ハイン』が目覚めたとき、あたりの様子は一変していた。

何より驚いたのは人間たちの数だった。

『ハイン』は人間を減らそうとして、役に立たなそうな小さな人間を魔法で焼き尽くしてしまった。

その小さな人間は「子供」と呼ばれる存在で、人間たちがたいそう大切にしていたものだった。

人間たちは叫んだり泣いたりして『ハイン』に抗議した。

しかし『ハイン』は自分の道具の言うことなど聞かなかったので、人間たちは怒り出してしまった。

人間たちは『ハイン』の言うことを聞かなくなってしまった。


人間たちは『ハイン』に反抗しはじめた。

『ハイン』は魔法で応戦したが、増えてしまった人間の数と魔法を持たないかわりに獲得した知恵にやりこめられることが多くなった。


困った『ハイン』は人間たちと取引をした。自身の半身とその力を人間たちに与えよう、と。

人間たちは、『ハイン』の力が半分になれば、あまり恐くないと考えたので、その取引に応じた。


『ハイン』は自分の身体を切り裂き、半身を人間に差し出した。

これで『ハイン』にとっても人間にとっても穏やかな日がくるはずだった。

ところが人間たちはこの『ハインの半身』が持つ力を奪い合って、争いをはじめてしまった。


長い長い戦いがつづいた。

このときにたくさんの国ができた。


この戦いに勝利したのが黒耳王ゼバルガとその一族だった。

彼らは森の中で居眠りしていた『ハインの半身』に約束どおりおまえの力をよこせと言った。

だが『ハインの半身』はのらりくらりと答えをはぐらかした。


なんとかしようとゼバルガは賢者バスカリューンに相談した。

賢者バスカリューンは知恵を巡らせて、『ハインの半身』から答えを聞き出した。

『ハイン』は半身に野蛮で粗野な腕力しか残さなかったのだ。

人間たちは『ハイン』の力の半分とは、当然、神秘の力である魔力の力の半分だと思っていたが、『ハインの半身』は『抜け殻のハイン』だったのだ。

その話を聞いたゼバルガ一族は怒った。

約束を破った『ハイン』を今度こそ倒そうと考えた。


しかし魔法を持つほうの『ハインの半身』は一向に見つからなかった。

人間は行方不明の『ハイン』に『魔法のハイン』と名づけて、何世代にも渡って捜し続けた。

『ファイナルファンタジーVIIIアルティマニア』

魔法

 そもそも魔法のストックとは、生体の記憶野メモリに発動条件となるキィを蓄えておく行為なのであり、魔法の導力そのものは通常の生体に宿るものではないのである。記憶の欠損はこのストックから来るものであり、厳密に言えばG.F.が原因ではない。G.F.をジャンクションすると、G.F.がキャッシュとして働き、通常より多くのストックが可能となるため、欠損率が尋常でなくなる。この際、記憶はメインフレームに退避され、逆に記憶のほうがメインフレームにストックされるのである。

 術者が魔法の詠唱を行い(或いは無詠唱魔法としてイメージを構築し)、魔法導力供給装置としての通常メインフレームである【月】に命令としてリクエストされる。

 発信された魔法はこの時点ではまだ単なるメソッドである。【月】はこれを翻訳し、魔法力として術者の元に発現させる。この一連のトランザクションをして、一般的に魔法と呼ばれるシステムである。このトランザクション自体には、疑似魔法も魔女魔法も差異はない。

 この際、術者の要求に対し、返送された実行効果(魔法力)が術者のキャパシティ(魔力、レベル、素質等の条件)を超える場合、魔法は術者を喰らってしまう。低レベル魔法使用による怪我程度ならば良い、未熟な術者が下手に高レベル魔法をリクエストすると、死に至る可能性もある。

 ストックとはつまり、術者が己のキャパシティ以上の魔法を要求しないための制限でもあるのである。実際はストックしていない魔法でも、何らかの手段を用いてメソッドを送信することは可能である。その際の実行結果については前述の通り。

ガーディアン・フォース

 G.F.のサーバとしての機能は幾つかある。

 と書けばわかるとおり、術者とメインフレームの間に立つプロキシのような役割をG.F.は担っている。実は魔法を使うに際し、G.F.を中継地として置いておいたほうが、直接【月】から魔法を呼び出すよりもずっと安全である。術者がキャパシティに見合わない高レベル魔法を要求した場合でも、G.F.がそれを実行不適切として、メインフレームの手前で処理し、エラーを返してくれるからだ。

 尤も増幅装置も兼ねているので、G.F.をジャンクションしている場合、術者は通常キャパシティよりも大分高位の魔法まで発動できるのが普通である。エラー判定は当然G.F.による増幅を視野に入れた上で判定される。

 ここで何より重要なのは、G.F.を介した魔法のメインフレームは【月】ではないということだ。G.F.を介した場合の魔法のメインフレームは【地球】になる。これはガイア、ライフストリーム、魔晄等の名で呼ばれてきたものと同様の導力源である。

 これはG.F.自体が【地球】と接続されているためである。この場合の【地球】とは別名、【力のハイン】と呼ばれる大地そのものである。

 G.F.が自身を導力として働くG.F.召還については後述(魔法のハイン参照)。

力のハイン

 【力のハイン】は神話の通り、魔法導力を何ら持たないただの器である。それが何故リソース供給を行えるのか。厳密に言えば【力のハイン】と、魔法導力メインフレームとしての【ライフストリーム】は別物である。

 【力のハイン】は元々【月】をメインフレームとしていた【ハイン】を、【地球】向けに改造した異位相体である。物質としては【力のハイン】は地球の大地に大地そのものとして根を張っており、これが後年地質学に「力のハイン」の記述が見られる所以である。

 原理的には地球の生物は(人間にしろモンスターにしろ)【ライフストリーム】のリソースを魔法として使用はできない。根本的に形式が違うのである。これを実行可能としたのが【力のハイン】の翻訳である。即ち【力のハイン】とは地球生物のリクエストを【ライフストリーム】の実行式に変換し、メインフレーム【ライフストリーム】からの導力を一般魔法導力(【月】向けリソース)に変換する、導力コンバータなのである。

 これら一連のシステムを総称して【地球】と呼ぶ。

魔法のハイン

リソース供給の流れ
図1:リソース供給の流れ

 自らの実体を地球導力向けシステムに変質させ、自らをイデア界の住人とした(自律エネルギー体となった)魔法のハインは、意志ではなく現象として、器を持つ生命体の間を渡り歩いた。これが後に言う【魔女】である。

 魔女は一定以上【地球】からの導力を使用していると、いずれその物質としての肉体を捨ててG.F.へと変質する。変質するよう、魔法のハインが自らのチカラに設定したからである。無論その後、G.F.としてメディア界に固着させることは可能ではあるが、あくまでも主体はイデア界に存在する存在となる。

 G.F.はイデア界ではリソースそのものとして機能する。即ち、ヒトに使役される場合のG.F.はメインフレームを介してヒトに供給される【地球】のリソースを仲介するインタフェースの立場であるが、メディア界に於てはリソース供給源そのものとして機能する。これがG.F.が「自律エネルギー体」と呼ばれる所以で、スタンドアロンサーバとしての機能も持っているこということである。G.F.を召還した場合のエネルギー源はこれに当たり、魔法と違い導力源はG.F.自身になる。

 つまり、魔女の力とG.F.は原理的には同じものである。後年、これはハインの予想以上に大きな効果をもたらした。魔女だけではなく、G.F.を使用し始めた人間も、次第にG.F.に変質したからである。

 のちに人間が疑似魔法を使えるようにしたことはハインにとっても想定外ではあったが、元々モンスターも使用していた程度の導力である。そこまでの大過とはならなかった。G.F.をジャンクションした人間、動物が増えるにつけ、いずれG.F.そのものが増加し、それは【地球】の導力となり得た。地球で生じたその余剰分の導力は、【力のハイン】によって魔法のリクエスト同様解析され、【月】仕様の導力に変換され、【月】メインフレームに送り続けられたのである。

 【力のハイン】を改造したことにしろ、【魔女】を生み出したことにしろ、ハインの目的は一つだった。即ち、【月】のリソースを消費させないこと。また、【月】のリソースを増やすこと。

 これをハインが追い求めた背景には、月の生い立ちが関係してくる。

月とハイン

 ハインは方舟たる【月】の上で長年モンスター達と争いを繰り返していた。ハインもモンスターの一人に過ぎなかった。

 ハイン達を乗せて宇宙を移動していた【月】は、いつしか惑星にぶつかった。この際、飛散した【月】とその惑星の物質が集積してできたものが、現在の月である。惑星のほうは、のちに人間に「地球」と呼ばれた。

 ハイン達モンスターは自分達の乗ってきた【月】を調べたが、無尽蔵とも言える導力源だったはずの【月】は、ジャイアント・インパクトによって地球の物質と混ざり合った結果、僅かにその導力を残すばかりの残骸となり果てていた。残った僅かなリソースを巡って、モンスター達は更に争い、魔法を放ち、リソースを消費していった。

 争いが続き、まさに導力が尽きようとしていた頃、王の座を勝ち取り争乱を収めたのは、当時名前もまだなかったハインだった。【月】を治めたハインは目処を見て【月】を離れ、新天地・地球に目を向けた。地球にも当然リソースは存在していたが、それはハイン達が扱える構造ではなかった。

 しかしジャイアント・インパクトののち、月に多く地球の物質が混じり変質したように、今で言うセントラ大陸には【月】の物質が多く残留していた。月の石はホーリーを精製し、ハインが地球に降り立つ頃には、地球の土壌を変化させていた。

 生命魔法・ホーリーには星に害を為す者を排除する性質がある。地球産のホーリーならばまだしも、月から生まれたホーリーの最大の敵は目下、地球のリソースそのものであった。

 そこでハインは、ホーリーに食い破られた地球が疵穴を癒すために放出された強大な導力を見た。今ではなくなってしまった【月】の導力、これを地球の導力で補填ないし代用できないかとハインは考えたのである。

創世記

 かくして自らの半神を導力の変換器に変え、生命体の間を渡り歩いてG.F.を作り続けたハインだったが、地球生物の脳は魔法を使用するにはどうにも効率の悪いものだった。

 地球の地下龍脈として存在するリソースを効率的に解析するため、己の手足としてハインは二足歩行型の高等生物を生み出した。それが人間である。ヒトはハインの言い付け通り、山を切り崩し、地面を掘り進め、ライフストリームの流れを研究した。

 作業が単純計算に落ち着いた頃合いを見計らって、ハインは一旦月に帰った。永の時を生きるハインにしてみればほんの僅かな時間、しかし人間が地に蔓延るまでには充分な時間だった。

 地球に戻ったハインは

 かくして【力のハイン】と【魔女】、【ガーディアン・フォース】によって、地球で生じる導力の余剰エネルギィを【月】へと溜める機構は完成した。今はまだ余剰分を送るだけの装置であるが、いずれ【月】導力に余力ができたらそのまま地球の導力を取り込む機構にしてしまうつもりだった。

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