時より古き運命に捧げるモイロロギア

Novel

「御免、選んでる最中で悪いけど、ちょっと抜けるね」

「なんだぁ、どうしたよアーヴァイン」

「やだなー、男の子にそんなヤボなこと聞いちゃ駄目だよー」

「素直にトイレって言えよ……」

 至って常識家のゼルを尻目に、僕がこっそりでもないけれど、ガーデンに戻ってきたのは、この度めでたくガーデン総指揮官に任命あそばされた、我等が班長の様子が気になったためであった。

 めでたいと感じているのは周囲だけのことで、本人としてはきっと冗談じゃないといった心持ちなのだろう新指揮官殿を、だからこそセルフィは慰めようとライブを決定したのだし、だからこそ僕はそっと静かにしておいてあげたほうがいいんじゃないかとも思ったのだ。どれほど相手のことを考えていたって、それが結果、本当に相手のためにならなければ、どんな愛情も結局は無意味だと、僕は思っている。どうも全体が莫迦騒ぎでの気散じの方向に向かっていたから、心配性の僕としては、反対の逃げ道も残しておかないと、とでも思ってしまったのかもしれない。

 或いはここ、フィッシャーマンズ・ホライズンに来てからの彼らしからぬ行動に、あの釣爺さんのように僕も、近頃のスコールに並々ならぬ興味を抱いてしまったせいかもしれない。泣き虫で自分一人では何もできない、何もしようともしなかった昔のスコールも大嫌いだったが、再会してからの任務一本槍何事にも興味はありません君はもっと気に食わなかった。それでもそれが僕の使命だと、彼に付き従ってきた。内心で彼を莫迦にしながら、何時の間にかとてもではないけれど僕の能力など及びもしない優秀な人間になってしまった彼に対する些かの嫉妬も混じって、いやます嫌悪感に、幾度自分の運命を恨んだことか。

 だが、あれ? と違和感を感じるようになってきたのはいつぐらいからだったろう。決定的になったのは釣爺さんが言ったとおりの、他人に干渉されるのを厭がるタイプのくせに結局他人のために奔走してしまう、そんな彼の性質に気付いたときだった。

 違和感と言うより、郷愁。彼のそれを優しさと取るか気弱さと取るかは、僕が認識する範囲に於いては僕の判断に委ねられており迷ったが、少なくとも彼が昔のままの性質を純粋に引き継いでいるのは確かなように思われた。

 たとえ、彼が幼い頃の記憶を一切失っていたとしても。

 僕の愛すべき少女が、変わってしまうが故に痛ましいほどその形を変えなかったように、彼もまた、変われなったが故に、痛ましいほどその形を変えねばならなかったのではあるまいか。そう思った。記憶はなくとも、その記憶をトリガとする感情の流れは確かに彼の中で出来上がっており、僕と同じ捨てられ続けた子供は、目の前にやっと差し出された生きるための唯一の術に、しがみつくように縋ったに違いない。自分のしていることに、疑問を抱くことも許されずに、ただひたすらSeeDとして。

 SeeDにしかなれぬ生き物。

 哀しいかな、彼はそれの理由を知ることはできない。記憶を持たぬ彼は自分のルーツも知らず、目の前の敵を倒してゆくことでしか、自分の存在価値を見出せない。現在の自分の持てる行動から、自分の軌跡を推し量るのみが、彼に許された過去への旅路だったのだろう。記憶などなくとも君は君なのだと、言ってくれるはずの幼馴染み達もすべて、彼同様に過去を失い、互いに互いの証明を不可能としている。

 愛しいあの子に似ている、と。そう思い、やっとスコールを愛しめたかもしれない。

「スコール……いい?」

 ノックしても返答のなかった扉に、諦めて帰ろうかとも思ったとき、本当にうっかりと開閉ボタンに手が触れてしまったのを、偶然と呼ぶにはロマンティックに過ぎて僕にはできず、ただ苦笑した。無用心にもロックをしていなかったドアはシュンと軽い音を立てて開き、果して眠り姫はそのむこうに居たのだから。

 シーツの間に身を滑らすこともなく、彼は整頓されたベッドの上で、右耳を枕に埋め、猫のように丸まって、ただ静かに寝息を洩らしていた。内臓を守るように丸まるその姿は警戒しているとも取れ、背を扉に向ける姿は全くの無防備とも取れた。

 そっと近付き、顔に影を落としていた前髪をはらっても、微塵も起きる気配は見せず、余程考えすぎて疲れたのだろうと推測されるばかりである。

 前髪を上げた寝顔はひどく幼く、そしてキロスという男の視線で見た、芯の強そうな、それでいて線の細い女性の面差しにそっくりであった。

「顔はお母さん似で性格はお父さん似……なのかな?」

 性格が遺伝によるものなのだと欠片も信じていないくせに、そんなことを思いたくなってしまうのは、やはり僕の中にある消すことのできない、親というものに対する劣等感のせいだろう。

 白いSeeD船に拾われた僕は、当然のように親無しの、だがその頃珍しくもなかった戦災孤児ではなく、孤児院から脱走したばかりの捨て子であった。モンスターに襲われ、得た自由と引き替えの命の危険に、これまでかと観念しかけたとき、女神は氷の刃を持って颯爽と現れた。

 鴉の濡れ羽色に腰まで流れる髪と、人間を思わせぬほど均整の取れた顔立ちの少女。数式のようにぴたりと収まるべきところに収まっているその異相の持ち主は、女神ではなく魔女であるとのことだった。

 彼女に船で連れられていった先、古代遺跡をそのまま利用したかのような廃墟とも言えそうな、青い海と白い石に囲まれた宿命の場所で、僕は運命を共にすることを義務付けられた子供達と出逢った。

 その中で一際存在感の薄かった、壁際に蹲るひとりの子供。存在の希薄さとは裏腹に、顔を埋めた腕に流れる髪が光を孕んでさらさらと、かの女神よりも美しく僕の目に映り、脳裏に焼き付いて消えなかった。

 あの子供よ、と女神は言った。美しく、優しく、無邪気で残酷な微笑をその綺麗な顔に刷いたまま。

(あの子を守ってあげてね……)

 すべての運命は彼のためにあった。彼女のすべては彼の未来のためにあった。冗談ではない、とこっそり皆の目を盗んで殴り付けてやろうと掴んだ胸倉、上げられた眼に振り上げた片手はそのままの形で止まり、呼吸さえも困難なほどに身動きが取れなかった。

 彼の蒼い瞳はひどい絶望を醸して潤い、何も映さぬ視界に、もはや居らぬたったひとりを映していた。

 彼もまた、運命に弄ばれる傀儡の一人に過ぎないのだと知って、僕はただただ絶望に慟哭した。床に突っ伏して泣く、先程まで自分の胸倉を掴んでいた見知らぬ相手を、スコールが見ているとも見ていないともつかぬ茫洋とした淋しい瞳で、ただ視線を当てていたことを今でも憶えている。

 それ以来、航海の途中で幾度か孤児院による機会があったが、僕は敢えてスコールに会わないようにしていた。彼一人を悪者と思い込むには、彼を知らないでいるより他に手立てを知らなかった僕は、確かに子供だったのだ。

 いつしか母女神を奪われるだろう運命を知っていた僕は、その元凶である彼までもが僕と同じ、家族を奪われた淋しい子供に過ぎないのだということを、それ以上思い知りたくなどなかった。

 僕の知る女神の成長した姿を取っている女性が、僕を見て淋しげに微笑む。彼女が、彼の奪われたたったひとりの家族だった。そばに居ても抱き締めることも許されず、姿を、名を、偽ってそれでもそばに居てスコールを守り続けているエルオーネは、何も知らぬ彼より余程つらかったのではないかと、最近思うようになってきた。

 彼女は知っていたのだ。すべてを知りつつすべてを諦めなければならないつらさを。イデアが僕を選んだと言って彼女に引き合わせたとき、彼女は御免ね、と消え入りそうな声で僕に謝り、涙でしとど顔を濡らしながら僕の疵だらけの身体を抱き締めた。九死に一生を得たばかりの身体はその海の水のようにしょっぱい液体を、ただ沁みて痛いとしか思えず、顔をしかめるのみであったが、それを彼女はどう解釈したものか。今思えば、死に瀕した人が一瞬見せる、あの何とも言い難い透明な微笑を、彼女はその泣き濡れた顔に浮かべていたように思える。

 彼女が弟のみならず、父に会うことも諦めていたのだと知ったのは、スコール達が予定通りガーデンに入園し、僕の女神が船長を務める船で、彼女と共に暮らすようになってからであった。スコールから自分を引き離す代償として、贖罪にもならぬだろうが、自分も弟と父に会うことはしないのだと、本来の姿に戻ったエルオーネは僕の想像よりもずっと優しく幼い顔で、そう言った。

 彼等は皆、スコールがSeeDになる未来を変えようともしなかった。未来は彼等にとって過去だった。その過去を変えることはスコールをも含めた世界が消滅することだと、彼等はよく承知していた。エルオーネはアデルの過去を、アルティミシアという未来の魔女に乗っ取られてまさにジカンアッシュクを成さんとされた世界の瞬間を、確かにその目で見てきたのだ。今その瞬間を乗り越えて彼等がここに生きているということが何を意味するのか、わからない彼等ではなかった。過去を忠実にトレースするために、エルオーネもシドも僕の女神も、その運命に身を投じ、自らを孤独に叩き落としていた。

 冗談じゃない。スコールがSeeDの道しか選べないようにするため、彼から愛情を取り上げるのは構わない、彼の手にはそれでも一人の女性が残ることが、確実に定められているのだから。だがそのために彼等までもが不幸にならねばならない理由が、彼等がそのために失う十何年を再び埋められる保証が、一体何処にあると言える?

 世界を救うことがそんなにもお偉いことか! 世界を守ることがそんなにも誰かの望みになり得るものか!

 セルフィ。戦争ごっこを好み、棒を振り回して遊んでいた僕の大事な少女。彼女は世界を救う勇者になることよりも、世界を滅ぼす魔王となって戦うことを好んだ。必死に世界を愛そうとしていたセルフィの、それでも両親を殺した世界に対する憎悪がきっと根底にはあったのだろう。守りたいものなんて、多分僕達にはいつだってほんの少しかなかった。そのわずかな愛するものたちを奪ってゆく優しくない現実を、それでも守らなければならないものなのか、僕にはいつも疑問だった。

 本当はわかっていた。そのちいさなちいさな、でも何より大事な、わずかに残った手の中の青い鳥さえ、世界が滅ぶと同時にまた失ってしまうのだということを。

 昔、たった一度だけ、スコールがエルオーネ以外のものに執着していたのを見たことがある。踏むとキュッキュと音を立てて僕達の足跡を残した白い砂浜に、海の向こうから波に運ばれて、辿り着いた翡翠の色をしたボトル。ボトルメールだった。海辺で遊ぶ子供達を後目に、ひとり離れて海と陸の境界線で波に濡れていたスコールが、何に足を止めたのかとそっと窺えば、その足許に緑が見えた。今迄万事において無関心だったスコールが何故その瓶に限って興味を惹かれたのか、僕にはわからない。だが彼は確かにそれに目を留め、足を止め、のみならずそれを掬い上げ、細い腕には如何にも重そうに映るみどりのびいどろを、しっかと抱いて隠すように一人こっそりと、石の家に戻ったのだった。

 これまたこっそりと、スコールの後を追いかけてひっそり静まり返る石の家を覗いた僕は、熱心にその瓶に封じられていた手紙を読み耽るスコールを見た。まだこの世界に彼の興味を惹くものがあったのだと、何に対してだかは未だに自分でもわからぬのだが、ほっと安心した記憶がある。その興味の対象が、かの女神の彼に向けられる確かな愛情ではなく、誰が誰に宛てたとも知れない手紙であったことに、ひどく腹立ちを覚えたものではあったけれど。

 他に道を選びようのない孤独を彼に与える作戦は確かに功を奏していたが、効き目がありすぎて、彼はこの世界の何処からも誰からも、美しく暖かいものを受け取ることのできない人間になっていたように僕には見えた。それはSeeDとなった彼に再会したのちも変わらぬ感想であり、昔より多少は成長したのだろう僕に、怒りよりも不安を覚えさせた。それでも嫌悪感は消せぬものであったが、彼が両親まで隠されていたのだという事実をこの段になってやっと知るに至り、危惧は心配に形を変えた。それは計画の完遂という以上にスコールのことを純粋に気遣っているのだろう感情で、それを感じた僕自身を驚かせるに充分な衝撃があった。

 もはや僕に仮想敵は存在していなかった。

 泣いてばかりの子供に対する苛立ちも、己の不幸にばかり目を向ける子供に対する憤りも、他人を己と同じ尺度でしか測れぬ子供に対する軽蔑も、己より優れた者に対する子供っぽい嫉妬も、敬愛すべき女神を奪われる絶望も、僕にとっても姉と呼べるようになった女性が選ばざるを得なかった運命に対する呪いも、今やすべてが、スコールに対する愛情と確かに呼べる感情に凌駕されていた。僕が一生持つことはないだろうと自分に信じ込ませていた、それは彼に対する自分でも信じられぬ仲間意識であった。

「……仲間、か」

 聞けばD地区収容所で、スコールは一心にゼルを助けに行ったという。ひょっとしたら記憶などなくとも、彼は皆と信頼関係を結べるように、或いはなることができるのかもしれない。彼を包むたくさんの愛情に、思い遣りに、気付けるほどには世界を愛せるように成長しているのかもしれない。それは僕の希望だった。

 何故エルオーネがラグナの半生をスコールに見せるようになったのか、何となくわかる気もした。彼に真実を知らせるだけならば、別段あんな過去から遡る必要などはなかったのだ。エルオーネはただスコールに見せたかったのだろう、彼女の知る中で最も優しく強かった彼女のヒーローを、その生き方を、生き様を。人々が、エルオーネが、ラグナに向ける純粋な愛情を、ラグナが人々に向ける広い広い愛情を。

 すべてを忘れてしまった弟に、人間の愛し方を、そして愛され方を。ただ、ただ彼女は。

 父親似、なのではないのかもしれない。ラグナにただ影響されてみたいと、或いはスコールでさえ思ったのかもしれない、彼の最近の変貌は。

 そう思いたいのは、僕の我儘だったのかもしれないが。

「…………。もう、過去を返しても大丈夫かな、君は。君達は。奪われた過去を恨むことなく見据える強さが、君達にあると信じて良いのかな」

 伝説のSeeDとやらに仲間が居るのか、それは誰にも知れなかった。スコールはたったひとりで過去に現れた。果して彼はひとりでその偉業を成し遂げたのか、知れなかったがいつでも彼に仲間を、幼馴染みを、与えられるように、僕は彼等の暗示を解く鍵を握らされていた。

 スコールが仲間というものを欲しようはずもない性格になることは、わかりきっていたのだ。皆がそう仕向けていたのだから当然のこととして、それでももし伝説のSeeDがひとりでは無理だと判断された場合、僕は彼に仲間を与えなくてはならなかった。それはもはや義務のはずだった、しかし。

 今は穏やかに夢の中でまどろむスコールの、僕が惹かれた伽羅色に流れる髪をそっと撫でれば、むずがる子供のようにいやいやと彼は首を振ったが、それでもやはり目覚めることはなかった。

 ガーデンの全権はスコールの手に委ねられ、人々の手で織り上げられたはずの運命は必然性を以て既に一人歩きしている。仲間の必要性は未だ不明なままではあったが、彼に記憶を返し、幼馴染みを取り戻させ、仲間をあげることはもう疾うに決めていたことだった。それは義務でも何でもなく、ただ僕の願いとして。

(あなたに名前をあげる。私の存在をあなたにあげる。アーヴァイン。あなたはこれから、アーヴィンよ。アーヴィン。魔女、女神、妖精。そういう意味。そしてもうひとつ、……友達。そういう不可思議な存在は、昔は人間の友達だったから。ねぇアーヴィン。ヒトの友人。どうかあなた、あの子の友達になってあげて頂戴ね……)

 友達の何たるかを知らなかったのは彼女のほうだった。その受け継いだ能力のせいで、友達など持てようはずもなかった孤独な少女は、僕にヒトとしての最後の儚い夢を託し、屹然と魔女の運命に立ち向かい、そうして今、僕達に殺されようとしている。

「スコール……君が好きだよ。今は本当に好きだよ。僕ももう君の仲間かい? 君にとって友達かい? 友達たり得る存在になっているかい? ねぇスコール。スコール。スコー……」

 零れる涙は次々にシーツに呑まれてゆき、布の色を変え、僕は声もなく嗚咽した。

 結果、アデル、アルティミシアという魔女以外は誰も死ぬこともなく、……殺すこともなく、僕達は現実に戻ってくることとなる。ただひとり、スコールを除いて。

 スコールは未だこちらには帰ってきていない。むべなるかな、彼は十三年前に寄り道をしているのだから。そのことを話せるはずもなく、リノアを連れて石の家を訪れたのは、帰ってきてから数日経った或る日のことだった。

 花畑で座り込み、膝を抱えたリノアをひとり残して、僕達はイデアの家へと戻った。僕は更に皆を残し、散歩と称して海辺に出る。

 記憶が間違えていなければ、あの木の根本あたり、砂浜の奥深くにそれは眠っているはずであった。

 当りを付けて、白い星砂を手で掻き分けてゆく。さらさらと指から零れ落ちる乾いた砂は存外掘るのが難しく、手間ばかり掛かる単純作業に僕の思考は飛翔してゆく。

 アルティミシア。

 どうあっても倒さねばならない相手であった。だかその眸が、美しい金色の瞳が、ひどく淋しげでイデアを彷彿とさせ、彼女を撃ったときのように一瞬手が止まってしまったなどと、言ってはならないことかもしれないが。

 やがて指先にふれた硬い感触。変わらず眠り続けていたタイムボックスに、目頭が熱くなるのを止められなかった。

 真鍮の小箱に収められていた古ぼけた紙切れは、僕達の大事な夢の欠片だった。開かれた紙に書かれたあどけない文字、いとけない言葉。

 まじょのきしになりたい。ああ、叶ってほしくなかった友人の夢。

 おとなになりたくない。叶うはずもない、今でも願い続けているだろう彼女の絶望。

 そんな中にひとつ、異質な紙質の、紙片と言うよりは手紙の様相を呈した紙の束。麻紐で括られている。首を捻った。

 全員の言葉はここに並んでいる、ではこれは一体誰のものだ?

 それは手紙であった。切なくなるほど暖かな、拙くも誠実な言葉の並んだラブレターであった。

 レイン・ロックハートに向けられた、何枚かに渡る長い手紙。

 差出人の名はない。

「……莫迦な……」

 紙の色は薄いみどり。細い腕に抱かれた翠の硝子から取り出された、記憶に残る色と同じ。

「偶然……にしては……ッ」

 ラグナには何も知らされてなかったはずだ。この場所も知らなかったはずだ、流れ着いたのが偶然以外の何物だというのだ。

「アーヴァイン! スコールが戻ってきた!」

 ゼルの叫びが砂浜のむこう、遠くから聞こえてきた。それを掻き消す轟音。

 空から紅い、天翔る神竜が降りてくる。

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