佐為の好きなかおりだった。
あまい甘いかおり。いつしか梔子という花なのだと教わった。
まだしっとりと雨の降りしきる梅雨時、だが空気はそろそろ熱気を孕んで、言外に夏の訪れを告げている。
湿っぽく暑苦しい空気は、その甘たるいかおりを閉じ込めて、化粧したおんなのように嫣然と自己を主張している。重たるい。
嗚呼塔矢に会いたい。あれはきっとどんな重い空気さえ、さらりと受け流して気にも掛けず、夏よりあつい熱情でオレを焼き尽くそうとするいきものだ。
はやくなつにあいたい。